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みんなにとっちゃどうでもいい出来事

ネコ屋敷

 
冷静に考えてみれば確かにそうかもしれないと思うことが、ここの所増えてきた。
どうでも良い事で言えば、父さんは猫が好きだ。
父さんは見た目がヤクザみたいだと、良く言われる。実際性格もヤクザみたいだと言われることも多い。
でもこっそりやさしい。猫を平気で叩くし、「〇〇でちゅね〜」なんて言葉の通じない相手にわざわざ赤ちゃん言葉を使うような事もしない。「邪魔だ この猫っ」なんて放り投げる事もしばしば。
でも無言で寝そべっている自分のお腹の上に乗っけてみたり、猫ジャラシで遊んでいたりする。
この前の夜なんて、いつも寝ていて電気の消えてる時間に電気をつけて、こっそり自分の布団に猫を入れていた。
俺も実はやったことはある。。やっぱり親子だなぁなんて確かにそうかもしれないとさっそく思った。

そういうわけで、俺の生まれる前からうちには度々猫がいる。
記憶の中で一番古いのは小学校3年生頃。
にゃん太というトラネコがいたけど、俺が学校に行ってる間に家の前の道路で車にひかれて死んでしまった。
帰りの会という名前の下校前のホームルームがあって、その中に「みんなから」というコーナーがあった。
ここでは生徒1人がクラスメイトに意見や、何か報告をする時間になっていた。
俺は「昨日 うちのにゃん太が死にました」と泣きながら報告したらしい。(この頃の友達から後に聞くまで忘れてた)
身近な生き物で最初の死かもしれない。
この冬にうちへポチが来てから、俺はすっかり犬好きになって、ネコはライバル! という態度になった。
4年生の頃親戚から ゴロ(オス) ミー(メス)を貰ってきてからは、うちは動物最盛期になった。
ポチが子犬を4匹。ミーがどっかのオスとの間に子猫4匹。
家の中も外もワンやニャーに占められていた。
うちのとなりは空家の平屋で、野良猫が生息していた。確認した数3匹。
うちの仕事場の縁の下には出入り口に最適な穴があいていて、そこから知ってるネコ(ゴロミー)や知らないネコがチョロチョロしていた。
ピペポネコと野良猫がどうやら大戦をやらかした事があったらしく、ゴロは全身傷だらけで一日外泊の後帰ってきて、野良猫は2匹だけ見かけるようになった。
ゴロはとっても強くて大きなネコだった。 でも長生きした後どこかにいなくなった。

高校生になってからも猫を飼った。今度はトラ。
そろそろ気がつく人も多いと思うけど、うちの動物は皆名前が単純。
今回もトラネコだからトラ。
こいつも長い間うちに住んでいたけど、体調を崩した。
原因はわからないけど、あまり外に出なくなった。
夜眠る前に父さんは「トラが外に出たがっているんだ」と俺に言った。
「こいつ もう死ぬんだよ多分。 だから出たがっているんだ」と言った。
ネコは死ぬところを見られたくないから、どこかにネコの墓場があるって教えてくれた。
そして父さんの予想通り、その夜に出たっきりトラは帰ってこなかった。

それ以来 しばらくネコは飼わず うちはポチの独断場がしばらく続く。
しかしおじいちゃんが死んだ年の3月。
ポチが老衰で死んだ。 母さんと散歩に出かけてその時からノソノソしてて歩みは遅かったみたいだけど、家に着いてポチの普段いる場所へ行く前の、ほんの少しの段差が昇れなくて、母さんが上に上げてやるとそのままパタンと倒れてしまったらしい。
死んだ夜。みんなにバレないようにこっそりポチに会いに行った。
亡骸に触ってなでてみると、少し温かいような毛と筋肉がカチコチなのがさみしくて、しばらく動けなかった。
ポチの話しはまた別で。 長くなってしまうから。

ポチがいなくなってから、うちは一層目に見えない喪失感が漂っていた。
ネコや犬がいると家族が何となしにそこに行くものだけど、それがないとみんなそれぞれの時間を過ごしてしまう。
我が家でもペットは接着剤として作用してたらしい。
家族が旅行に行ってしまって、家が寂しく広く感じてしまうような気持ちがずっとしてた。

2003年またネコをもらって来た。今度もトラ。
いい加減 見た目がそうだからといって、同じ名前を平気でつける我が家はどうかと思うけど。
こいつもオスだったから 発情期に家出をしてしまい。それっきり帰ってこなかった。
またまたネコをもらって来た、同じく2003年。
今度はモカ(メス)今いるやつだ。ちなみに今回は父さんではなく妹が名前を付けた。
そして負けずに父さんは「パンダ」と呼んでいる。 余談だけど俺がつけた「ポチ」に対して父さんは「ゴン太」という固有な呼び名を持っている。自分で決めた呼び名でしか呼ばない人みたいだ。
このモカはとても食い意地が張ってて、家族誰かが何か食べているのを見るなり餌を欲しがる。
一日の大半を食事の催促に使っているかもしれない。
ぶくぶく太った。
そして 子猫を2匹産んで元通りに痩せた。
どうやら妊娠していたみたい。
二匹の子猫のうち真っ黒い猫は4月17日生まれということから417⇒シイナ⇒シイナキッペイ「キッペイ」。
白と黒の猫は遅れて生まれたことから RATE=レイト
と妹が付けた。
もちろん 父さんは固有の呼び名を単純につけていて、クロ、シロと呼んでいる。
今回ばっかりは俺もレイトやキッペイといったモダンな名前は賛成できず、クマ、ナカワケ と固有の呼び名を主張している。

さてさてクマとナカワケを改めて観察してみると、人格ならぬネコ格というものが確かにある。
兄弟でもまったく違う。
クマは好奇心旺盛で活発。無鉄砲。
ナカワケはトロイ、感心は色々な物に向くけど遠くで眺めるか、ゆっくり近づくかに留まる。すぐビックリする臆病。
モカを含めた三匹が同時に食事をしているのを見ていた。
一応にガツガツ食べている。これはモカの血。
最初に食べ終わったのはモカで、少し離れたところに移動して爪をなめている。
次はクマ。 同じく食べ終わってからモカの近くに行って爪をなめている。
最後まで食べているのはナカワケ。食べ終わって少し離れた頃にはモカはいなく、クマも暴れ始めていたから1人で爪をなめ始めた。
ここまでわかりやすいのを見て感心した。 

猫ジャラシで2匹同時に仕掛けても、すぐ飛びつくのはクマ。 ナカワケは少し様子をうかがってからワザワザ寝転がって恐る恐る手を伸ばす。 クマはすぐ飽きて他に行くのに、ナカワケはしばらく遊んでいる。
これもまた感心した。 しかしナカワケの名誉のために書くと、二匹の力の差は無い。
まさに性格の違いなんだね。
二匹の画像はこれまたこっそり撮って、乗っけたいと思います。

うちの仕事場の床を張り替える工事をした。
すべて床をはがして地面が見えるようになると、床下にネコの骨があった。
かなり大きな足の骨が特徴のほぼ全身分と思われる量の骨だった。
俺は出来る限り全ての骨を集めて裏に墓を作った。
うちの仕事場の下は猫の墓場なのかもしれない。