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⇒みんなにとっちゃどうでもいい出来事
秘密基地
幼稚園生 小学校に入る前くらいに幼い時。 近所に住んでいる同級生は女の子ばっかりだったから、僕は女の子の友達の方が多かった。 どちらかというとすぐ風邪をひく、熱を出す子供だったらしいが正直詳しくは覚えてない。 ・幼稚園行きのバス停へ向かう途中、毛虫の沢山いる木を通らなくてはいけなくて、道路にはみ出して通っていたこと。 ・男勝りに怖い女友達に、逆上がりの特訓をうけてむかついたこと。 ・幼稚園の運動会で、弟をトロッコに乗せて引っ張って走る役を、お母さんの代わりに出たこと。 ・幼稚園の帰りに弟の組まで兄貴気取りで偉そうに迎えに行ったこと。 ・文化祭でどこかの組が作った、粘土の弁当セットがとっても欲しかったこと。 ・お泊り保育のために大好きだったヒモ(エプロンの)を卒業したこと。 ・誕生日に職員室で担任の先生に「〇〇君」って書いてある手形入りの色紙をもらって、それがすごくうれしかったこと。その後幼稚園内にある、大きならくだの遊具の上で写真を取ったのもうれしかったこと。 まばらで時間の感覚の無い、切れ切れの記憶があるだけ。 幼稚園を卒業したら、天王台にあるこの幼稚園から、学区の離れた我孫子の小学校に行かなくてはならない。 小学校に入る前たぶん一番最後の記憶は、多分夕方おばあちゃんと二人で小学校へ散歩に行った時、「幼稚園が終わったら次はここに通うんだよ」みたいな事を話したこと。 たぶん僕は小学生になるのが怖かった。 先輩小学生が大きくて、先生がとっても怖そうだったからだと思う。 仲の良い男友達はほとんどいなく、何より逆上がりを強要した怖い女がいたし。。 でも入ってみると友達はすぐできた。 基地への憧れ 小学校3年生の頃 僕らの間で「秘密基地」が流行った。 日曜日の朝8〜9時頃やってた「おもっきり探偵団 覇悪怒組(これでハード組って読む)」の影響が大きい。 仲のいい男友達数人だけの、大人に秘密の基地を持つ。 少し悪い事をしているようなスリル、友達と一緒という高揚感。基地を作る楽しさ。 共通の秘密っていう事が素晴らしくウキウキさせた。 僕の身なりは小学校指定のジャージ。 腰にはポシェット(←今では死語?これ) ポシェットの中には 〜「カンシャク玉」。 「使わない方位磁針」。 「非常食という名のただの駄菓子(粉々)」 「パチンコ (ウソップが使ってるようなY字の武器)」 「ガムラツイストのシール (ビックリマンみたいなもの)」 「BB弾」 「小さくて黄緑色の透明な水鉄砲」 など七つ道具とまではいかなくても、いらない宝物がいっぱい詰まってた。 もちろん親友達も同じような出で立ちで、特に僕らの仲間になるためには駄菓子の「石井屋」で60円のパチンコを買わなくてはいけないルールだった。 まず僕の家の隣に秘密基地を作った。 僕の家の隣は生まれる前から平屋の空家になっていて、周りは雑草に覆われた恰好の遊び場だった。 通称「荒井さんの庭」 この荒いさんと僕のうちは古くからの顔見知りらしく、敷地内で少しくらい遊んでも大丈夫だったけど、調子に乗って屋根に登り、忍者のようにスタタタ・・・・と歩いていると「コラ!!」とお父さんに見つかり、 しばしば友達みんなでゲンコツをもらった。 これは家族に多分バレて無いけど、僕らはこっそり空家の裏玄関のたてつけの悪いドアを開け、中に進入したことがある。 だいぶ前から空家だった室内は昼間なのに薄暗く、誇り臭い。 すごく前の日めくりカレンダーが壁にかかっていて、炊飯器が1つ。学生服と学帽が1つ見えた。 もちろんもっと沢山の物があるに決まってるけど、僕らは肝試し以上に怖くてドキドキしてしまって、ただ薄暗くてすごく薄気味悪い。としか覚えてない。 離れのプレハブのような8畳位の建物には、古汚れたソファーと衣類の入ったままのタンス。 なぜ引っ越す時に持っていかなかったんだろう。。何か有ったのだろうか。。そんな空想を自転車をこぎながら真面目に討論した。 しかしながら家の中のあまりの怖さに一度しか中に入ろうとしたことは無い。 そして相変わらず荒井さんの庭で鬼ごっこやかくれんぼ、屋根の上歩き、塀の上を歩いて探検ゴッコ、そしてエアーガンの打ち合いなど、僕らは遊んでいた。。 栄町の森 ある日 隊長のあっちゃんの家の方に、楽しい公園みたいなものがあると教えてもって連れて行ってもらった。 そこは森の中をまっすぐで緩やかな下り坂が一本走っていて、その森の真ん中あたりの道の左右に、木とタイヤを使った手作りっぽい遊び場のある空気の良さそうで最高に面白そうな場所だった。 僕はとっても気に入った。 でもそこの公園で遊んだ記憶はほとんどない。 なぜならば、あっちゃんはその森の中に基地にできそうな木を発見してたから。 僕らはあっちゃんとおおこうたん(小学校2年の頃の仲良しコンビ)が森の中で発見した、探検コースを案内してもらって遊んだ。 基地候補に選ばれた木は、森のちょうどめんどくさくない程度に奥、少し開けたような空間の真ん中にあった。 見たところ低い場所に枝が少ないから登り辛そうに見えるけど、適度に細いねじられたツルがロープのように木の傍にあり、それを使って登ることができそうだった。 僕らはここを、友達の中でも特に親しい人だけの基地にしようと計画した。 まず、どんな基地にしたいかみんなで話し合った。 まぁ話し合ったといっても初めから決まっていたような物で、森の中で基地といったらトムソーヤの家みたいな、木の上でゆったり出来るタイプの基地、というかホントは家が作りたかった。 しかし小学生にそこまではとってもとっても無理で。それでも「いつかは本格的なものにしようね」って約束をして。 とりあえず、せめて人が休めるような場所を作ろうっていう事で、資材集めに町内会を自転車でまわった。 必要だったのは、 ・木の上に取り付けられる大きい板(ハンモックみたいなものでも良いな) ・板を固定するロープ、もしくはそれに代わる物。 ・階段 基地にする木は高いところに枝が生えていて、隣りのロープみたいな木を使わないと登れなかった。 僕は登れたから良いけど、中には登れない仲間も居たから、なんとか簡単に登る手段をという事で階段を作る事になった。 まずうちの近くにある竹の子広場という小さい公園の鉄棒に、縄跳び発見。 人も近くに持ち主らしい人もいなく、ありがたく頂戴。ハイ。犯罪ですね。ごめんなさい。 ついでに近くにあった工事現場にある、黄色と黒の縞模様のロープも拝借。 うちからは金づち、釘、ノコギリの基本三点セット。 それから 何に使うのか ミノ、キリ、極めつけにカンナまで借りまして(コッソリ)。 そして毎度おなじみ非常食というなのすぐに食べられてしまうお菓子。 ほぼ毎日、結局短い間になってしまうのだけど、僕らは道具とアイディアとワクワクを持って基地に集合した。 まず始めにとりかかったのはハシゴ作り。 一枚の長い板を斜めにかてかけ、足場のために平行に板を打ち付けていく形を考えた。 新井さんの庭(作業工場)で一生懸命釘を打って、夕方拍手の中完成。 早速軽そうなやつが登ってみると、平行の板に止めてあった釘が曲がって抜け取れてしまった。。 「あ〜あ。。」 「なんだよ〜」 と。 思ったより僕らは体重があり、また釘が弱かった事を学んだ。 木に直接平行の板を打ち込んでもみたんだけど、やっぱりしっかりした足場にはならず、ただ板を斜めに傾けてるようなものになってしまった。 せめてもの情熱で初めの一歩目に弱い釘をこれでもか!ってくらい打ちつけてしっかりした剣山のような足場を作った。 さて次に一番大切な休憩スペース。 木に登って上から見る景色は実際はあんまり変わらなくても、すごく気持ちよく感じるもので、例えるなら砂浜から見る海が普段の景色で、船首からみる海が木の上みたい。 同じ風景を違って見せてくれるという月並みな表現を実感できる場所。 そこにしっかりした「場所」を持つことは憧れ以外の何者でもない。。 しかし 釘=弱い⇒当てにならない。 の法則から板と釘ってわけにはいかなくなった。 またもや 巡回戦術で良い部品を探した。 色々な部品を手にとって見た。 人の家の鉄の柵を力いっぱいちぎって(これも犯罪です) 鉄が使えないか検討したり。 いっその事柵ごと持っていって使ってしまおうか、というくらいハングリーに探しました。 「なかなか見つからないものだな、やっぱり、、」 なんて疲労して帰ってくると、森から基地への途中にある木の上に、 ステンレス製の柵のような物がなぜが置いてあった。 そう、これは運命のように。 今思えば、ゴミ捨て場まわったらいっぱい良いもの落ちてたんだろうな。。 しかし運命の柵はちょうど取れないくらいの微妙な高さ。 ジャンプしても手を伸ばしてもダメ。 そこで肩車して取る事にした。 「しっかり支えてよ〜」 「重い。。。早くしろ。。」。。木を支えに使いながら柵をつかみ、下で待つ受け取る役へ渡す。 チームワークは良いのです。 そうして念願の地面 ゲット! 早速取り付け作業にかかった。 とりあえず、前回なんとかなった釘の乱れうちで安定させようとしたけど、やっぱり無理。 なので例の縄跳び、工事現場のロープ達に大活躍してもらい、なんとか取り付けで休憩所完成。。 交代で休憩所に入ってみると、ロープが少し動きそうになるけど思ったより安定してて感動した。 1〜2人くらいしか入れるスペース無いけど、枝の上や足場のすぐ上とかのスペースも使えば仲間全員が一本の木の上に乗ることが出来るようになった。 すごく楽しかった。 無意味にすぐ上のあっちゃんに「もしもし 聞こえますか?」って電話口調で話し掛けたり、木の上場所の交換をしたり。 友達に自慢したりもした。 これでは秘密基地にならないじゃないか! 大人や基地を自分の物にしたがるようなやつには言わないからOK。 駄菓子屋でお菓子買って、基地に行って。立ち入り禁止のはずの森の前に自転車が数台止まっているんだから、不思議に思われるだろうに。。いつまでもこうしていれると思ってた。 下は完成図です。 しかしもう少し基地の話しは続きます。 後編 月並みな表現だけど、事件はある日突然起きた。 ホントに突然世界が変わってしまう日は予定せず来る。だからこそ一日が楽しく感じられるのだろう。 作っていた頃は毎日通っていた基地も、出来てしまうと安心して案外他の遊びをしていた。 合わせてこの頃、僕らの間ではPCエンジン(ファミコンのような物)の伝説的ソフト「モトローダー」がビリオンヒット! みんなそろって僕の家に来てレースに熱を上げていた。 そんなある日の朝の教室。 基地のメンバーの一人、いしわっちゃんが「おい!大変だ!」と急いで僕らのところにかけてきた。 「どうした?」 子供の頃の僕らは「何そんなに慌ててるんだよ(笑)」と第三者からの目ではなくて いつでも「どうした?!」と解決できるだろう事件に憧れてたから、朝のニュースはすごく興奮した。 「あの森が壊される事になるかもしれない!」 「え! なんで?」 「森の周りが柵で覆われてるんだよ」 「いつから?」 「わかんないけど、久しぶりに行ってみたら、入れなくなってるんだよ!」 「今日見に行ってみようぜ」 と、思いがけない解決できない事件で僕は動揺した。 授業中も僕は基地が犯される事に頭にきたり、どうして大人たちは自然を破壊するんだろうなんて真剣に恨んだりしていた。 そして放課後森へみんなで行ってみると、よく公園なんかで見る緑色の鉄の柵が森の周りに張り巡らされていた。 どうやら森はまだ壊されていないみたいだ。 みんなでどうしようか真剣に話し合った。 「どうやったら大人から基地を守ることが出来る?」 基地を防衛する手段(僕らの七日間戦争のように武装する)という所から話し合いはスタートして、 地球の環境破壊にまで発展していってホントに真剣に考えた。 でももちろん答えは出なかった。 元々僕らは入ってはいけない場所に基地を作ったのだから、それを外から守ることは僕らのヒミツ自体をなくしてしまう事になるから。 だから「今日は大丈夫だった」って観察することしか出来なかった。 なかには「俺が偉くなってこの森を買う」なんていう奴もいた。 そうして工事は始まった。 今まで緑色だった場所は茶色く平たくなっていった。 しかし森の半分くらいを茶色に変えてなぜか工事は一旦止まった。 僕らの基地は森の入ったところにあったはずだったけど、この工事で外からすぐの場所になってしまった。 でも基地は無事生き残った。 この工事以降僕らは基地に行かなくなった。 そして昔森だった場所には家が沢山建った。 こうして町は出来てきたんだなぁと思った。 悲観的でもロマンでもなくなんとなく、昔我孫子全体が緑で覆われていた頃のことをイメージしてみた。 僕の家が建っているこの場所にも昔基地を作った人たちはいたのだろうか。 学校の裏にある森や、おばあちゃんの家の近くにある森や湧き水の出る場所も変わっていくのだろうか。 環境の事に初めて関心を持つようになった。 そしてこの考え方は絶対忘れないようにいようと僕らは誓った。 今でもこの頃の友達はきっと森林伐採にとりあえず全面的に反対。 それから10年くらい経った20歳になった成人式の日の近く 秘密基地のメンバーとは仲良くなくなったり、近くにいなかったりと色々あって今では僕を含めて三人になってしまったが、 久しぶりに基地の森に行って進入してみた。 基地に行くことを決めて車の中でいろいろ思い出してみた。 基地のすぐ傍で蜂が出てあっちゃん筆頭に駆除部隊出動。上手く空き缶の中に閉じ込めて近くの湧き水の川に沈める水攻め。 そしてそのまま放置した場所。 そのすぐ近くに生えて外から中の様子をわかりにくくしてくれてた、天然の柵の杉の木達 なぜか基地の近くに必ず建設した穴を掘ったままのトイレ。 そして基地の木。 それらはそのまま残っているだろうか。 期待と不安とはまさにこのことだ。 森へ入ると。 あの頃僕らが動きまくったせいで少なかった雑草も、今では行く手を阻むくらい大きく成長していた。 そしてあの頃のままの気持ちでは歩きにくくなってしまった体。 服が汚れることなんか気にもしてなかったけど、今では革靴を履いていた。よそ行きのコートも着ていた。 森は思ったより暗くて、方向がつかめなかった。 湧き水は止まってもうわからなくなってしまったし、あの頃は僕らが動きまくったせいでか少なかった雑草も、今では行く手を阻むくらい大きく成長していた。 「あれ〜どこだっけか・・・」 「あ〜 こんな木あった気がするな〜」 あんまり覚えてないけど「懐かしいかもね」 なんて言いながら外からすぐのはずの基地を探した。 そして「あ!あれじゃん!」 その基地はまだあった。 剣山のように打ち込んだ釘は全て錆びて、すっかり周りの幹と同じ色になり、強い地面(木の上のスペース)はしっかり付いてた。 全体的にやっぱり小さく見えてしまうから不思議だった。 となりに在ったロープの木はほとんど折れていたけど、基地の木は確かにあった。 今見ると少し木が痛々しい。環境破壊どっちがだ!という気持ちになる。 でも懐かしさとまだあって良かったという気持ちが大きい。 あの時のメンバー全員が揃ったわけではないけど、3人は一緒に見れたからうれしい。 僕らの秘密基地はもう少し、頑張ってくれそうです。 |